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なにっ!半導体が足りないだと!? どうするニッポン!

車や家電製品を作るのに不可欠な半導体。その半導体が足りなくなり日本をはじめ各国の自動車メーカーがその影響で生産を減らす動きが相次いでいます。半導体がなければ車も家電も作れない。アメリカや中国はこうした認識のもと今、半導体の生産や開発を国家戦略の一部と捉え積極的な政策に乗り出しています。日本はどうするのか。

半導体不足の背景

スマートフォン、パソコン、車などあらゆる電子機器に搭載される半導体の需要はデジタル化の進展で年々高まっています。

そして、さらに一層拍車をかけているのが新型コロナウイルスの影響です。テレワークや巣ごもり需要が増えてパソコンやゲーム機が飛ぶように売れ、半導体も世界的な奪い合いになっています。

ところが車の部品メーカーは感染症拡大の影響を読み違え、半導体の注文をいったん大幅に減らしていました。このため半導体が手に入らず、車用の部品も完成車も作れなくなってしまいました。

日産自動車とホンダは今週今年度の販売台数の見通しを当初の計画より引き下げると発表。事態が収束するのは早くて夏ごろとみられています。せっかく回復を見せてきた自動車業界ですがその流れに水を差す形となりました。

さて、半導体不足の要因がこれだけであればあくまで一時的な現象だともいえるでしょう。しかし、問題は要因が他にもあることです。ひとつはアメリカと中国の対立です。

アメリカ政府が中国の半導体大手の輸出規制に踏み切る動きをにらんで自動車以外の多くのメーカーが在庫の為の注文を増やしていました。これが半導体の争奪戦に拍車をかけることになりました。

またヨーロッパが進めているグリーンエコノミー政策も少なからぬ影響を及ぼしています。脱炭素化の目標を達成するため省エネ用の半導体の注文が殺到し、車用にまわる分がさらに少なくなったとみられているのです。デジタル化脱炭素化という時代の2つの大きな流れを受け今、自動運転や省エネの技術開発が進んでいます。

最先端の半導体を手に入れられるかどうかがその先の製品開発の成否を握り企業や国の競争力をも大きく作用します。それだけに今回の事態がいったん収束しても争奪戦は続き、ほしい半導体がほしいときに手に入らないという事態が再び起きる可能性があると警告する声も聞かれます。

 

米中の主導権争い

こうした中、半導体を制する者が世界を制すと考え主導権争いを繰り広げているのがアメリカと中国です。いずれも半導体国産化への支援と輸出管理という“アメとムチ”を使い分けライバルに打ち勝とうとしています。

まず、“アメ”に当たる半導体国産化への支援についてですが、アメリカは「CHIPS FOR AMERICA」半導体チップをアメリカに、をスローガンに半導体を重要な戦略物資と位置付けています。

アメリカへの工場の誘致や設備の導入には1件当たり日本円で最大3000億円程度を支援する方針を発表。10件の助成を決めれば3兆円規模となる巨大プロジェクトです。

昨年秋にはこうした支援策もテコに世界最先端の微細化技術を持つ台湾の半導体生産受託大手「TSMC」のアリゾナ州への工場誘致に成功しています。

一方、中国も合わせて5兆円もの資金を半導体技術の開発に投じています。世界の携帯電話のおよそ9割、パソコンの3分の2以上を生産している中国ですが、それを作るための半導体は海外からの輸入に大きく依存しています。

半導体を売ってもらえないという事態が続けば兵糧攻めにあうかの如く国の生産活動に大きな影響が及びます。このため自らが半導体大国になることが国の悲願です。

優秀な人材を海外からもリクルート半導体自給率を今の20%以下から2025年までに70%に引き上げるという高めの目標設定をしています。

次にアメとムチの“ムチ”に当たる輸出管理の部分ですが、日本にも大きく影響が及ぶ可能性があります。

アメリカは通信大手ファーウェイなど中国企業150社以上を対象にアメリカの技術を使った製品の輸出を禁止。第3国からの再輸出も禁じていることから日本のメーカーの輸出にもすでに影響が出ています。

更に今、アメリカと関係の深い国を巻き込み多国間半導体セキュリティー基金を設立しようという動きもあります。日本を含む各国に中国への半導体の輸出管理で歩調を合わせるよう求めてくることが考えられます。

これに対し中国も牽制をしています。アメリカへの配慮で中国への輸出を自粛する企業を「信用できない会社リスト」に掲載する。中国でのビジネスをやりづらくさせるとしています。

日本をはじめ各国がアメリカと中国の板挟みにあい翻弄されることも予想されます。

 

日本の対応策と課題

こうなると問われるのが日本の戦略です。かつては半導体大国ともいわれた日本は、今でも一部の半導体や製造装置、シリコンウェハーと呼ばれる部品、それに生産過程で使われる化学薬品の分野では世界トップクラスの技術やシェアを持っています。

しかし、人工知能やデジタル化の発達でこれから一番伸びると言われている分野、ロジック半導体という最先端技術の分野では世界最強と言われる台湾の「TSMC」やこれに次ぐ韓国のサムソンに太刀打ちできる企業はもはや日本にはありません。半導体の研究開発予算も2000億円程度とアメリカや中国より一桁少ないのが実情です。

では日本はどのような対策を取ればいいのでしょうか。

自動車メーカーをはじめとする日本企業が安定した調達を続けこれから先も世界で通用する産業競争力を持つためには海外の力を取り込む。有力半導体メーカーの工場を国内に誘致することが重要ではないかと考えます。

こうした中突破口として期待されるのが今週決まった台湾「TSMC」の日本での開発拠点の設立です。茨城県つくば市にある産業技術総合研究所の施設を使い日本企業との共同開発に取り組みます。

日本政府の再三の招きに応じた形ですがTSMCにとっても日本の優れた素材メーカーを組めるメリットがあります。

最終的な顧客である自動車メーカーも一緒になってやり取りし技術を模索する中で日本発の新しい製品のアイディアも生まれてくる。それがまた、相手企業にとっても最先端半導体の開発に役立つという好循環を生み出すことが期待できます。

これを手掛かりに海外の半導体メーカーとの直接の結びつきをどう強め日本の安定調達にも役立てるかが課題となります。

そして、もう一つ考えられる対応はこれから需要が伸びてくるであろう省エネ用の半導体の研究を重点的に進めることではないでしょうか。

デジタル化で車や通信機器が扱うデータの量が飛躍的に増え消費電力も大きくなるのが課題となってきました。日本も脱炭素化を目指す中でグリーンエコノミー政策の一環として研究開発を加速させるべきではないかと考えます。

各国が半導体の重要性に気づきスピード感を持って開発や生産を競う中、日本が手を打てるのは今しかありません。日本の自動車や素材産業が世界のトップクラスに居続けるためにも半導体産業の再生に向けて国も企業も全力を尽くしてほしいと思います。

櫻井玲子 解説委員(経済担当)

 

時論公論半導体が足りない! 問われる日本の戦略」』より

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