これは終わりではなく11年に及ぶ戦乱の幕開けであった! 止められない止まらない、応仁の乱!!
1466年暮れ、都を不穏な空気が支配した。家督を奪われ京を離れていた畠山義就が山名宗全の求めに応じて数千の軍勢を引き連れ上洛したのだ。
幕府の実権を細川勝元と畠山政長に握られた宗全はこれに対抗すべく畠山義就に接近していた。
宗全は勝元と袂を分かち政権奪取へ動いた。義就の軍事力を目の当たりにした将軍義政は早々に義就を畠山家の家督と認めた。
政長は家督を取り上げられたばかりか管領も罷免され幕府内に居場所を失った。新しい管領には宗全の娘婿の斯波義廉が就任し、剛腕フィクサー宗全のクーデターは成功した。
だが、これは終わりではなく11年に及ぶ戦乱の幕開けであった。
京都市上京区にある御霊神社。管領の座を追われ京を離れるかと思われた畠山政長はこの森に陣を構えて義就に決戦を挑む。
将軍義政はこの戦いをあくまでも畠山家の騒動として諸大名が加勢することを禁じた。1467年1月18日に政長と義就の両畠山軍は激突。戦いは義就の圧勝。だが、この時思いがけないことが起こる。敗走する政長軍に山名宗全の配下が追い打ちをかけたのだ。
武士の面子をつぶされた勝元はおさまらなかった。各地の軍勢に号令をかけ宗全との対立が表面化していく。
磯田
「剛腕フィクサーの面目躍如って感じですね。一気に細川勝元・畠山政長の体制を覆しちゃいましたね。実力行使に出る、先手を打ったって感じですね。」
呉座
「勝元は将軍の足利義政と山名宗全の間に入って、宗全のことを嫌いな義政をなだめて、いわば、勝元は宗全をずっとかばってきたと。宗全をサポートしてきたという意識があるわけですね。で、そのおかげで宗全の今があるというふうに勝元は思っているので。」
呉座
「細川勝元は畠山政長と同盟関係を結んでいるわけですから、その政長のライバルである畠山義就に加勢するっていうのは、そりゃ細川勝元にケンカを売るというのと一緒ですので、なんでそんなことをするんだ、こんなに良くしてやったのにというのが勝元の気持ちだったと思いますよね。」
渡邊
「まさか宗全が戦いに参加するってところに驚きがあるんですけど・・・。」
中野
「宗全のこの時の年齢っていうのは無視できない要素だと思っていて、この時すでに60代ですよね。当時としては相当高齢だと思うんですけど。まあ、権力を握るフィクサーとしての最終目的を果たすにはもう時間がないっていう焦りが、相当あったんじゃないですか。」
呉座
「それはそうでしょうね。」
小谷
「せっかくここまで武力を使わずに政治力だけでうまくやってきたのに、ちょっと詰めが甘いという印象ですね。畠山義就と政長だけでやらせておけばいいものを、ここでなんでわざわざ山名宗全自らというか配下の者が介入したのかというのは、ちょっとわからないですね。」
小谷
「ここまでやるなら、畠山政長を討ち取る。そこまでやらなくてはいけなかったんですけど、ちょっと逃げられちゃったので禍根を立つことができなかったわけですね。」
中野
「手を出した割には中途半端だったということなんですね。」
呉座
「そういう意味では宗全は勝元をなめていたというか、甘く見ていたんだと思うんですよね。武士っていうのは舐められたら終わり。それは絶対に何とかしなければいけない。勝元にしてみれば、それは軍事力を使ってでも名誉を回復しなければいけないということになったわけですよね。」
磯田
「弓矢で恥を描けない。あともう一つが頼みある大将じゃないといけない。相手側に保護する力を持っていると見せつけていなくてはだめで、あの人は頼もしい武将であると思われてない状態は武士はあり得ないんです。あっという間に求心力を失うというのが武士の世界ですねよ。」
呉座
「助けてくださいって言われたら、ちょっとどうかなってやつでもかくまってあげないといけないんです。」
渡邊
「今回応仁の乱が11年続いたって言うことで、どこかで止めるタイミングはなかったのかっていうのを随所に考えていきたいんですけれども。この勝元が反撃体制を整える前に将軍の足利義政が介入していれば止められたんじゃないかって思うんですけど。」
小谷
「私の個人的なイメージなんですけど、足利将軍っていうのは今でいう国連みたいなもんですよ。で、山名宗全はロシアか中国ですよ。で、いきなりロシアか中国がアメリカの同盟国にミサイルをぶっ放したわけですよ。これでアメリカが黙ってられるかと。国連はアメリカを止められるかと。絶対に無理ですよ。アメリカは必ず反撃します。そういうことですよ。」
磯田
「ここはね、義政が本当はリーダシップを取って停戦協定に本気で向かわなければいけないんですよ。いってないですよね、やっぱり。」
呉座
「まあ、何もやってないですね。」
小谷
「いやもうだって、ほっといたら宗全の勢力がどんどん拡大するわけですよ。それはもう止めないといけない。武力を持って止める、それしかないですよ。」
つづく
出演者
【司会】
磯田道史
国際日本文化研究センター 准教授
主な著書に「武士の家計簿」「無私の日本人」など
【出演】
井上章一(建築史家)
著書「京都ぎらい」が話題に
呉座勇一(歴史家)
国際日本文化研究センター 助教
著書「応仁の乱」が40万部に迫るベストセラーに
著書「戦争な日本中世史」など
中野信子(脳科学者)
東日本国際大学教授
人間の行動や思想を脳科学の観点から多角的に分析
著書「サイコパス」など
橋本麻里(美術ライター)
永青文庫副館長
美術番組での解説から高校美術教科書の執筆・編集と幅広く活躍
著書「美術でたどる日本の歴史(全3巻)」など
小谷賢(戦史研究家)
日本大学教授
情報・戦略から見た戦史研究のエキスパート
著書「日本軍のインテリジェンス」など
※2017年7月現在
『英雄たちの選択スペシャル▽まさかの応仁の乱!もうどうにも止まらない11年戦争』より
ここまでお付き合いいただきありがとうございます m__m