消せるボールペンで書いた文字が消えるのはなぜかご存知ですか? それは・・・!!
消せるボールペンで書いた文字が消えるのはなぜ?
それは・・・
温度が上がると透明になるインクができたから。
専門家
「消せるボールペンで書いた文字は消えてなくなるわけではなく、こすった摩擦熱によってインクの色が透明に変化しているんです。」
インクが透明になるとはどんな仕組みなのでしょうか。
一般的なインクは液体の中に色のもととなる小さな粒が入っています。
透明になるインクはその色のもととなる粒を小さなカプセルにして3つの成分を入れました。
Aは色のもとになる発色剤。元々は無色なのですがBとくっつくことで発色してインクに色を付けます。
Cの成分は普段は眠っている状態ですが温度が上がると目を覚ましBを引き寄せAから離します。
するとAは発色できなくなりインクの色が透明になるというもの。
そして温度が下がるとBはCと離れAとくっついてまた発色するというのもです。
「このインクの原理は今から半世紀ほど前に当社が発見した画期的なインクだったんですが、消せるボールペンのインクになるまで30年以上たくさんの寄り道をすることになったんですね。」
大阪万博が開かれた1970年にある筆記具メーカーの研究者が新たなインクの研究を始めた。
「私の大先輩の研究者が紅葉した山を見て、あの葉っぱのように温度の変化で色が変わるインクは作れないものか、と考えたんです。」
様々な化学薬品の配合を試し続けること1年。
出来上がったインクを少し温めてみると透明に変わった。
温度で色が変わるインク。
画期的な発明だった。
しかし、大きな問題に気付いた。
すぐに商品にならない。
「ビーカーの中では成功したんですが、インクとして発売するには色が薄かったりカプセルが弱かったりと改良点がたくさんあったと聞いています。」
研究開始から5年。
ようやくこのインクを使った商品が生まれた。
それは筆記具とは程遠い『魔法のコップ』
常温では透明だが温度が下がると色が出るインクが使われた。
冷たい飲み物を注ぐとコップに描かれた枯れ木に花が咲くものであった。
1985年にはおもちゃにこのインクが使われた。
「私は当時、このインクに凄い可能性があると感じて入社しました。」
この頃、研究チームには目指すものがあった。
温度が上がり一度変化した色を温度が下がってもキープしたままにできないか
「それまでの色の変わるインクは、例えば30度以上で色が消え30度以下になるとまた元の色に戻ります。」
「これに対して30度以上で消えた色が温度が下がっても消えたままキープして10度以下まで下がるとやっと色が戻ってくるというのを考えたんです。」
1988年、チームは色をキープさせる技術を確立。
するとアメリカのメーカーからある依頼が来た。
そのインクを使って可愛い人形を作ってほしい
メーキャップ人形だ。
水で冷やしたスポンジを唇に当てると口紅が。そして目に当てると鮮やかなアイシャドーが浮き出た。温めるとすっぴんに戻り何度も楽しめた。
「この人形がアメリカで凄く売れたんです。このヒットがなければ色が変わるインクの研究はここで終わっていたかもしれません。おもちゃに救われました。」
「社内での評価も上がったので、筆記具にこのインクを使えないかという研究が本格化してきました。」
21世紀になると会社は色が変わるインクを筆記具に使うという方針を発表。
色が変わる原理が発見されてから実に30年が経っていた。
そして生まれた筆記具が
「こすると色が変わる不思議なボールペン(2002年発売)」
これは普通に書くと黒だが擦って熱を加えると色が変わるというものだった。
「残念ながら我々が期待するほど世間は評価してくれませんでした。面白いペンなんだけど何度も使ってもらえるような実用性はなかったんでしょうね。」
そんな時、グループ会社の社長だった一人のフランス人が来日。
その社長は言った
黒い文字が赤になるのではなく、黒が透明になるインクは作れないのか。
研究者たちは口をそろえた
それは最初からある
この社長が求めたものこそ消せるボールペン。
「ヨーロッパでは絶対に売れる環境があるから、ぜひとも作ってほしいというものでした。」
われわれ日本人は勉強する時に鉛筆を使い間違えたら消しゴムで消す。
一方ヨーロッパでは小学生の時から勉強にはボールペンや万年筆を使うのが当たり前。
間違えたら修正液で消す。その煩わしさがあった。
だからボールペンの文字が消せれば生徒たちが飛びつくと考えた。
「ただ、消せるボールペンとして発売するには乗り越えなければならない壁がありました。」
「猛暑の日でも書いた文字が簡単に消えず、かなり高い温度で一度消えた文字は冬の寒い場所でも消えた状態を保ち続ける温度設定にしなくてはなりませんでした。」
その結果、消せるボールペンの為に生まれたインク温度設定は熱い所では65度で色が透明になり温度が下がっても透明の状態が続き、マイナス20度になると元に戻る設定にした。
2006年、消せるボールペンがヨーロッパデビュー。
売れた。
売れに売れ店頭からペンが消えた。
2007年、日本でも売ってみた。
売れた。
バカ売れした。
初めてインクが透明になって実に36年の月日が経っていた。
「長い道のりでした。本業の筆記具とはちょっと離れた寄り道がたくさん経験できたからこそ、今までになかったボールペンができたんじゃないかなと思います。」
「文字は消せてもいつかは筆記具にという研究者たちの夢は消えることがなかったですね。」
色が変わるインクは消せるボールペンとなり、世界累計販売本数で30億本(2019年時点)が売れている。
ということで消せるボールペンの文字が消えるのは 温度が上がると透明になるインクができたから でした。
追加情報
透明になる温度が65度なのはなぜかというと、力の弱い子どもや女性が専用のラバーで紙の上を擦った時に出せる温度が65度だったからということです。
『チコちゃんに叱られる!「真夏のエキゾチッコ・ジャパ~ン スペシャル」』より
ここまでお付き合いいただきありがとうございますm__m