『天文時』と『常用時』2つの時間ルールが存在するというおかしな状態が近代まで続いていた!?
1日の始まりは何で真夜中なんだろう。
そんな疑問を抱いたことはありませんか?
私はありません。笑
何で真夜中に日付が変わるようになったのかどうしても知りたいという人はこのまま読み進めてください。
そうでない人は、そっとこのページを閉じましょう。笑
それではここからが本題です。
どうぞ!
専門家
「そもそも1日の始まりが真夜中の0時と統一されたのは意外と最近で1925年のことなんですね。」
「実は昔は今と真逆で1日の始まりはお昼の正午と考える人もいたんです。」
1日の始まりが正午?
「このルールは2世紀ごろに活躍したカリスマ天文学者 プトレマイオスが提唱したものなんです。」
プトレマイオスとは古代ギリシャを代表する天文学者で、オリオン座をはじめ48もの星座を広めたまさにカリスマ。
「天文学者の主な仕事といえば夜から朝にかけて行う天体観測です。でもその最中に日付が変わってしまうととてもめんどくさいことになるんですね。」
例えば夜通し観測を続けた場合、夜中の12時に日付が変わると今日の星の動きではなくて昨日と今日の星の動きになってしまいます。
このように観測途中で日付が変わると記録の表記がややこしくなってしまうのです。「そこでプトレマイオスは日付の切り替わりを天体観測の邪魔にならない昼間にしようと決めました。こうして天文学者たちは1日の始まりを正午とする『天文時』を使うようになったのです。」
しかしお昼の12時から1日がスタートする天文時はほとんど浸透しなかったといいます。
「そりゃそうですよ。普通の人にとっては朝起きて夜寝るまでが1日ですから、お昼の12時は1日のど真ん中になりますよね。もし、お昼の12時に日付が変わるとすると朝仕事に行って12時を超えた段階で仕事が2日目に突入することになります。朝から夜まで働けば2日間働いたことになって出勤簿も2日分かかないといけません。こんな不便なことはできないですよね。」
そのため多くの人々は日の出から1日が始まるとか、夜寝ている間に日付が切り替わるなどそれぞれの地域でルールを決めて生活していました。中でも現代と同じ真夜中に日付が変わる常用時が多く使われていたそうです。
「一般市民が使っていた常用時。そして暦の専門家である天文学者が作った天文時。2つの時間ルールが存在するというおかしな状態は近代まで続いていたんです。」
「そんななか1917年にあるクレームが起こり、それがきっかけで1日の始まりが真夜中になったのです。」
舞台は第1次世界大戦真っただ中のイギリス。当時イギリス軍はドイツ・オーストリアなどを相手に熾烈な戦いを強いられていました。
「当時、航海士が見ているのは天文学者が作った航海暦。通称、データブックと呼ばれる本です。」
「何月何日の何時にどんな星が夜空のどこにあるのかなどの情報が掲載されています。航海士たちはそのデータブックと星の位置をもとに自分の船の位置や進路の方向を決めるのに役立ちました。」
「航海士たちが普段使うのは真夜中に日付が変わる常用時。しかしデータブックは天文学者が作ったため1日の始まりが12時間ずれた時刻。つまり航海士たちが自分たちの位置を把握するためには常用時の時間から12時間引いたうえで航海暦と照らし合わせる必要があったんです。」
1922年、世界中の天文学者たちが集まる国際会議、第1回国際天文学連合総会。
1日の始まりは真夜中にすべきか昼間にすべきが議論が行われていました。
「1917年から5年に及んだ日付がいつ変わるか問題。プトレマイオスの時代から続く伝統を守りたい。そして簡単に譲りたくないと主張する天文学者もいたんですね。」
時刻が世界で統一されるまでの歴史を記した『グリニッジ・タイム』には当時の議論の様子が描かれており、とある天文学者が
『天文学者の知性をもってすれば必要とされる変更を取り入れるのに何らの困難もなかろう』
と言ったと書かれています。
「結局、最後は天文学者が折れる形で1日の始まりは真夜中に統一されました。航海士の長きにわたるクレームがついに実を結んだんです。」
『チコちゃんに叱られる!「今夜はクリスマスイブ!豪華拡大版スペシャル」』より
ここまでお付き合いいただきありがとうございます m__m